「滅びゆく町」などとも呼ばれるが、私はこの国が好きだった。
細く長く続いた橋を渡り、山を登ると、私たちしか知らない町がある。
ここにいれば、誰にも邪魔されることはない。
先人達が作り上げたこの街は、古くから、私たちだけの場所だったのだ。
それが、最近ではおかしなやつらが訪れるようになった。
誰も許可などしていないのに、我々の国へとずかずかはいってくる。
奴らは街の姿を作り変え、壊して行った。
本当にとんでもないやつらだ。おまけに、何を言っても通じないし、何を言っているのかもわからない。私たちを蹴り飛ばそうとすることさえある。私はあいつらが嫌いだった。
かっかするなよ。悪い奴らじゃないぜ。
若いものはそう言うが、分かっていない。
ここは、神聖な場所なのだ。
私は奴らをにらみつけ、唸り声を上げる。
「見て。あの子かわいい」
「本当だ」
「やっぱり、たくさんいるね」
「なんて言ってるのかな」
「餌が欲しいんじゃない?」
猫は、こっちを見ながら、ぐるるる、と鳴いていた。
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