2013年4月18日木曜日

男は用心を怠らないことで有名だった


男は用心を怠らないことで有名だった。


外食をしに行けば、「これは何の肉を使っているんだ。本当に安全なのか」と聞き、橋を渡るときはそれこそ本当に"たたいてから渡る"のではないかという程に確認をする。当然、電車のつり革などはつかめない。潔癖症に近いほどに神経質な彼は、村のみんなに変わりものだと言われていた。



一方、男がどうしても許せないもうひとりの男という者がいた。

もうひとりの男は、大らかで、のんきな性格だった。「だいじょうぶ」が口癖で、何に対しても大した不安を抱かず、しかし、行動力でトラブルものりきってしまうような人だった。人を助けるために燃え盛る家へ飛び込んだり、山で遭難しても何日か後にけろっと帰ってきたり、人が驚くことを平気でやるのだ。そんな性格なので、彼も村のみんなからは変わり者だと言われていた。



ある日、とてつもなく大きな嵐がきているという情報が村にはいった。
その通り、雲行きは怪しく、いまにも何かが起こりそうな様子であった。
男は、いつにもまして用心した。
必ず備えておかなければ、大変なことになる。

男は家じゅうを補強し、雨風が入ってこないようにした。しかし、それでも依然として不安だった。もしかしたら、木が飛んで来て、屋根が壊れるかもしれない。そう考えた男は、雨が降り始めてもなお、屋根の補強を続けていた。

「もう嵐が来るぞ。お前もうちの中でおとなしくしていた方がいい」

「いや。これではまだ危険だ。家に入っても飛ばされちまうよ」

村の人たちはあきれ、家の中に戻っていった。
どんどん風が強くなっても、男は作業を止めなかった。



次の日、村の人間が見たのは、案の定、大きな木にあたって死んでいる男の姿だった。

「死んでしまったか・・・」
「やめておけばよかったのに・・・」

村の皆は男を憐れみ、ものごとは、もうひとりの男のように、のんきにやった方がいいということを知ったのだ。



それからすぐに、隣の村の者が訪ねてきた。それは、先日の嵐によって、不運にも村の食糧や住まいがほとんど壊れてしまったために、こちらのものを分けてほしいという要請のためであった。こちらの村でも、ダメージは0ではなかったため、村人は悩んだ。

しかし、もうひとりの男が「だいじょうぶ」とごり押しをし、食糧や住まいをシェアすることになったのだった。



まもなくして、多くの人間が村に移り住んできた。しばらく暮らしているうちに、村の政治に参加する権利が欲しいと言ってきた。それも、もうひとりの男が「だいじょうぶ」と言うと、用心のしすぎで死んでしまった男のこともあり、村のものはすぐに納得してしまった。



だんだんと、要求されるものは大きくなってきた。こちらには女が少ないから、そちらの村の女を嫁にもらえるようにしろだとか、食料の提供が少ないだとかだ。しかし、ことあるごとに、もうひとりの男が「だいじょうぶ」と言っては皆を納得させてしまい、隣の村に好き放題やらせているようになってしまっていた。



さすがにこのままではまずいと気付いた村の人々は、徐々に不満を高まらせてゆき、ついに、村から追い出すために抗議をしに行くに至った。

「もうお宅の村を再建して、戻っていただかなくてはなりません。これ以上村に住まわせることは不可能です」

「とんでもない。どうしてそのような仕打ちを受けなければならないのです」

隣の村の人々は理不尽な言い分を並べたて、こちらが何を言っても聞くことはなかった。ついには、「どうしても戻らなくてはならないというのなら、戦をします」と言い出す始末であった。

困った村の人は、もうひとりの男に相談をした。すると男はこう答える。

「だいじょうぶ」

間もなく両村は戦を始めるのだった。



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完璧主義では前進できない

  • 完璧主義に囚われた人は、過ちを恐れるあまり細部に拘り、全体を見失う。ぐるぐる回って閉じ込められて、エネルギーを消耗する。こうして自分の独創性を面白みのないものに変えてしまう

  • 完璧主義者はうまくいかないが、完璧のためにはもっと良い方法がある(英語記事)。

  • より高いハードルを自分に課し、より大きな成果を達成すべく、日々努力することは、自身の成長にとって大切なことですね。しかし、ときに「完璧」にこだわりすぎることは、視野を狭め、効率性を損なうなど、せっかくの志がアダとなってしまうことも...。こちらでは、「完璧」という名のトラップに陥らないための心がけについて、採りあげてみたいと思います。

  • 完璧に何かをやり遂げるというのは本当に難しいことです。自分に対して批判的な目線を持っていればいるほど、やらなければならないことは増えていきます。ですが、本当に問題なのは完璧にしなければならないということに怖じ気づいて、仕事をやりたくないと思ってしまうことです


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