2013年3月30日土曜日

初めて恋をした時の話をします



その日、僕は恋をした。

それは友人宅でバースデーパーティをしている時だった。一目見た瞬間に、彼女しかいないと思い、隣にいた友人に名前を聞いた。



彼女は、僕みたいな冴えないやつにもよくしてくれた。

学校で合えば挨拶をしてくれるし、集まりがあればいつも話しかけてくれる。恋愛経験があまりない僕にとっては、それだけでも幸せなことだった。



大学の学食で、あまりにもきれいに笑う彼女に呆けてしまっていて、目があってしまったときは、冷や汗をかいた。

しかし、そんな時も彼女は、「そのシャツかわいいね」と帰り際にいい、去っていったのだった。好きにならないわけがない。



ある日、僕は彼女のメールアドレスを聞くことができた。

最初は―――というよりいつも―――僕はドキドキしながらメールを送って、やりとりが何件も続いていくのが楽しくて仕方なかった。

幸せだった。

冴えない大学生活が彩り始めた。僕は勝ち組だとさえ思った。



それから僕は毎日彼女にメールを送った。

そっけないときもあったけれど、彼女はいつでも感情的で、メールを送るこっちも楽しくなった。



しかし、近頃は、あちらからの連絡はほとんどなくなり、返信も短くなってしまっていた。何かがおかしい。彼女は僕に気があるものだとばかり思っていたのに。

僕は、彼女をハメようとしている男がいるのではないかと疑った。そうして、その男の正体を暴くためにも、僕はめげずにメールを送り続けた。君は騙されているんだ、とストレートには聞かない。僕は頭を使い、彼女が傷つかないように、慎重に何度も探りを入れたのだ。



そうこうしている間に、何故か彼女は、学部を変更し、別のキャンパスに移ってしまった。



信じられなかった。どうして。僕に一言も声をかけずに。



しばらく僕は放心状態だったが、つい先日、一通のメールを送ることにした。はったりだが、彼女の気持ちを動かすには十分すぎるくらいのメールだ。



「君が僕に恋をしていたのは分かっているよ。まあ、それを認めない理由も明白だったけどね。まず、僕はあのとき彼女がいた。でも、僕はいま独り身なんだよ」



これでいい。彼女のことは僕が誰よりもわかっている。だって、君は気付いていないだろうけど、君のことを誰よりも見ているのは僕だからね。これからもずっとそばにいるよ。





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